ALSOKサイトのコラム記事への批評

www.alsok.co.jp

 

 ちっぷす@東海(@tips_0724)内での問題提起を受けて、私も自身で批評記事書いてみる。


 まず、コラムという位置づけとはいえ、これが建物防犯の会社の広告の一部であるという点は前提として踏まえておく。つまり、加害者の取り締まりという方向性よりも、被害者の自衛(危機感をあおる)や、加害をしようという意向を防犯によって抑制する、みたいな方向性に重点があるのは、不自然ではない(合理的理由がある)。
(例えば、記事内でリンクが貼ってある小学生向け「ALSOKあんしん教室」の記事は、そこまで問題あるものではない。)https://www.alsok.co.jp/person/tellme/03/

 とはいえ、やはりそこはバランス感が重要で、自衛一辺倒だけでなく、例えば防犯に関連させるにしても、バイスタンダーの話とかを出すこともできるはずだし、そもそも女性たちだけがどうしてこんなに自衛しなければならない(求められる)社会状況なのだろう、ということへの目配せも、何か一文あるかないかでバランス感は大きく変わってくる。

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アルボ:『これから日没が早くなるので、今後の安全のために“夜道の防犯”抜き打ちチェックをさせていただきマシタ。お姉さん、残念ながら0点デス……。ぼく、ショックデス。』

お姉さん:『抜き打ちチェックー!? なによそれ! ショックなのは私よ!!』

 

アルボ:『抜き打ちチェックの結果、お姉さんはスキだらけデシタ! 猛省! 猛省を促しマスッ。』

 

 あなたどの立ち位置(position/positionality)からそれ言ってるの?という問いは重要で、当人の防犯行動に点数付けて「猛省! 猛省を促しマスッ。」とか言ってるアルボは何?あなたは何のために私を採点してるの?という問いがある。記事内でこの問いの答えは明らかになっていない。(読者の防犯意識を高めるためとかではなく、物語内でアルボがお姉さんを「抜き打ちチェック」する目的。)ここで、物語上、「私があなたを心配になるんだ。私があなたに安全でいて欲しい」とかいうアルボの目的が見えたらまた評価は変わってくる。(ここには、上記の商品宣伝であるという点が関係している。つまり、危機感をあおり防犯意識を高め、うちの商品の購買意欲を誘うという目的を明言しないがゆえに、「私の安全があなた=アルボにどう関係しているっていうの?」という問いは宙ぶらりになっている。)そして、もし、「私があなたを心配だから」みたいな目的であったら、「ぼく、ショックデス。」というニュアンス表現や、「猛省を促す」とかいう強い言葉は使わないのではないかと思う。

 

 興味深いのは「お姉さん」が『抜き打ちチェックー!? なによそれ! ショックなのは私よ!!』と反応している点。つけられて怖い思いした上に、『ショックです』とかいう(訳わからない)こと言われたら、こういう反応が自然・妥当だろう。不審者・加害者かと思ったら、おどけたマスコットキャラだった、という点(ギャップ・落差)にある種の笑い(コメディさ)も見出せるが、「なーんだ、アルボだったのか」という反応ではなく、上記のような反応をあえてさせている点が興味深い。

 こういう「正しい」返答をさせておきながら、このアルボとお姉さんとの「衝突」は解消されないまま物語は進む。アルボに非があるのか(例えば「防犯マニアすぎるがゆえの失礼キャラ」なのか)、あるいはお姉さんの反応のほうがおかしいのか(ショックだったけど後で説明を聞いて納得、というパターンもあり得る)、という(作者の)判断について、記事はメッセージを出していない(解釈できない)。

 

 こういった宙ぶらりんさによって、(場合によっては悪さが指摘できる)アルボの振る舞いの問題点が解消されず・着地せず、ゆえに、読者にとっての納まりの悪さに繋がる。

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お嬢さん:『わーん、大人になるのコワイよぉ、アルボ~~!』

アルボ:『お嬢さんも油断してはいけまセンよ。小さな子どもをターゲットにする犯罪者も少なくないのデス。』

 ここの女の子の反応も(あえてこうさせているという点が)興味深い。「全体的に20代の被害例が多い」という言を受けて、小学生(中学生?)の「お嬢さん」が「大人になるのが怖い」という自然・真っ当な思いを表明している。これに対して、アルボは「いや、幼い今でも危険なんだ」という過酷な現実を突きつけはするが、解としては「油断するな」と自衛を述べるのみで、その「怖い」社会をどのように彼女らにとってより安全な社会に改善していくか、とかいう言及はしないし、あるいは、過酷な現実の中で、少なくともその恐怖感情を緩和させようと、「私(たち)(=アルソックのスタンスとして)は社会をこういうふうにしたいと思っていて、こういうことに取り組んでいる。あなたも、(望ましい社会に向けて)現状でもこういうことができるよ」といったケア的返答はしない。

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お姉さん:『あとは、触っている手を捕まえ犯人を特定するのよね。泣き寝入りはダメ!』

 ここはかなり問題。「泣き寝入り」したくてする被害者はいない。それぞれの当人の状況ごとの事情から当人がどう行動するか(できるか)を判断しているのであって、他者が「泣き寝入りはダメ!」みたいなことを言うべきではない。被害者へのこういった指示は、「あなたがされたそれは十分に悪いことである」「あなたのその利益・権利は守られるべきものである」とかいうこととは別の主張になっている。

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 記事内で「年末年始」とか書いてあり、「更新日:2014.11.05」と書いてあるが、統計データはこれ以降のを使っているので、これは多分最初の投稿日で、データ部分だけ更新しているのだろう。(最終更新日は不明。)

 まあ、8年経てば、こういう記事に対する(女性への性犯罪や「自衛」をめぐる)世間の価値観の潮流も多少は変わってくるし、自社メディアを見直す良い機会なのでは。

 もし有志でアルソックへ改善要望したりするなら、普通に意義あると思う。

 

追記:ちっぷす@東海で動きます。関心ある人は私にご連絡ください。